現状の電子書籍制作環境への対応の一環として、Adobe InDesign®から書き出したXMLデータをPerlスクリプトを介して各種電子書籍で使用できる形式のXMLに変換するシステムを構築、効率的な電子書籍制作の環境を実現すべく研究を重ねています。ここでは一例として、InDesign からEPUB3.0への変換ワークフローをご紹介します。
1 元ドキュメントをチェックします
EPUBに変換するInDesignの元ドキュメントをチェックし全体的な作業の流れを考えます。表や画像など後から挿入する要素は別途処理し、PNGやJPGの画像として挿入できるよう準備します。InDesignの元ドキュメントからは画像類を取り除きます。
2 割り当てるスタイル/タグを一括インポートします
「タグ」パレットのメニューから「スタイルをタグにマップ」を選択して、あらかじめ用意してあるテンプレートからスタイルとタグの関連付け情報を一括インポートします。
3 元データのスタイルをテンプレート内のスタイルに置換します
元データの段落・文字スタイルをひとつずつ選択、メニューから「スタイルを削除」を選択しテンプレート内のスタイルに置換していきます。
4 InDesign内で文字スタイルを使用せずに付加された文字装飾要素にも全て文字スタイルを付加します
全ての文字装飾要素にスタイルを付加する必要があります。
ただしインライン要素の入れ子(ネスト)にあたる部分は、InDesign内で文字スタイルを当てる方法では処理できません。
5 インライン要素の入れ子部分の処理のための仮テキストタグを付加します
インライン要素の入れ子(ネスト)部分のタグ付けのために、独自に定義したテキストタグを付加します。このテキストタグを後処理でXMLタグに置換します。
6 画像の挿入のために、画像名を拡張子込みで記入しスタイルを当てます
底本で画像が挿入されていた箇所の近傍の段落の後に、画像名を拡張子込みで記入し画像用のスタイルを当てます。これをXML書き出し後のスクリプト処理で画像リンクに変換します。
7 外字をチェックします
外字画像として処理する必要のある文字をピックアップします。外字処理はとくに事前打合せが大切です。
8 外字画像を書き出します
外字画像化が必要な文字をInDesign内で選択し、PNG形式の外字画像として最終書き出し処理します。
弊社ではこの手順をスクリプトで自動処理しています。
9 段落スタイル及び文字スタイルにXMLタグを自動で割り当てます
メニューから「スタイルをタグにマップ」を選択し、全ての段落・文字スタイルに自動でタグを割り当てます。
新たにスタイル作成を行った場合はあらかじめ対応するXMLタグをセットで作っておき、ここで割り当てます。
10 インライン要素の入れ子処理のために付加した仮タグをXMLタグに変換します
InDesignの正規表現置換機能をスクリプトで連続実行し、5で付加したテキストタグをXMLタグに変換します。文中のルビ保持のために最初にXMLタグを付加し、その後でテキストタグの部分を消去する形で処理します。
11 タグ名を確認し、必要であればXML属性を付加します
タグ名をざっと確認し、必要であればXML属性を付加します。
ただし、変換後にテキストエディタ等で処理した方が効率的な場合が多々ありますので、適宜判断して処理します。
12 XMLファイルを書き出し、XHTMLファイルに変換します
InDesignからXMLファイルを書き出し、書き出したXMLファイルをPerlでXHTMLデータに変換します。
13 ファイルの分割、目次用のID付加などを行います
6で目印を付けた1ページ大の画像を挿入する箇所でファイルを分割します。またファイルサイズが大き過ぎる場合もファイルを分割します。
14 完成したXHTMLファイルをSafari/ Chrome等のブラウザで表示確認します
最終的にEPUBパッケージ化する前に、XHTMLファイルをChrome/Safari等のブラウザでプレビューし、表示をチェックします。
15 OPF パッケージファイル、目次を生成します
「電書協EPUB3用OPF ファイル生成」(三陽社メディア開発室)を起動し、各項目を入力してOPFパッケージファイルを生成します。目次用ファイルも同時生成できます。
16 EPUBパッケージを完成させる
完成した各ファイルをフォルダに収納し、不可視ファイルを除去してからパッケージ化し、EPUBパッケージを最終的に完成させます。
17 EPUBパッケージを最終確認します
パッケージ内にデータの不整合がないか、不適切な文字が含まれていないかを「EPUB3トータルデータチェッカー」(三陽社メディア開発室)等で最終確認します。
*AdobeおよびInDesignはAdobe Systems Incorporated(アドビ システムズ社)の米国ならびに他国における商標または登録商標です。